2020年秋の臨時国会で可決・成立した「種苗法の一部を改正する法律案」。
春の通常国会で継続審議になって以来、国民的な関心が寄せられ、
農家も賛成・反対に分かれて議論をたたかさせてきた。
品種の海外流出防止と
農家の自家増殖(タネ採り、挿し木、わき芽挿しなど)
原則禁止をめぐって、錯綜する議論をすっきり整理。
自家採種は農の根源的営みであり、
タネと苗は知的財産であるとともに公共財でもあるという視点から、
タネと苗の未来を展望する。
農文協ブックレット22
タネと苗の未来のために
農文協 編
定価:990円(税込)
ISBNコード:9784540201745
発行:2020/12
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 96ページ
(執筆順・談話含む)
梨木香歩 作家
塩野米松 作家
藤原辰史 京都大学人文科学研究所准教授
松延洋平 元農林水産省種苗課長
大川雅央 国際農業開発学博士
石綿 薫 育種家
林 重孝 日本有機農業研究会副理事長
伊東蔵衛 埼玉県三芳町・農業
西尾敏彦 元農林水産技術会議事務局長
石堂徹生 フリージャーナリスト
内田聖子 NPO法人アジア太平洋資料センター(PARC)共同代表
蔦谷栄一 農的社会デザイン研究所代表
原村政樹 ドキュメンタリー映画監督
■ 読者カードから ■
----- 2021/5 -----
まず種子法と種苗法とが全くちがう目的でつくられたことを知ったのは大きな収穫。農家による自家増殖を制限することは、生物多様性を制限することにつながるのではと感じた。
(新潟県 農業 男性)
各地の育種文化を破壊する動きにどう向きあえばよいか、様々なことを考える材料になりました。ベランダ菜園ですが、採種し、また次につなげています。
(兵庫県 男性 60代)
----- 2020/12 -----
種苗法改正の際、農家の人たちの意見が対立する理由がやっとわかりました。しかし、現行の種苗法でも育種家の権利は、個々の農家との契約で守られる道があるのだから、農水省の真意は、やはり、多国籍アグリ企業に日本の種苗の門戸を開くことだと思った。消費者としては、安全な有機野菜の種苗が守られてほしい。
(神奈川県 主婦 50代)
(ウェブ上に本棚をつくる「ブクログ」)
----- 2021/3 -----
種苗法を通して考える 農業の、そして食卓の未来
このところ「タネ」の周辺が騒がしい。2018年3月に種子法が廃止され、今度は種苗法が改正の動きを見せている。不安や反対の声も大きい一連の流れだが、いままでこんな法律があることさえ知らなかった人たちの関心を呼び起こしたのも事実だ。
種苗法は、どう変わろうとしているのか。改正の動きが起きるきっかけとなった出来事から改正案の骨子まで、ことの次第がまずは明らかにされる。
そもそもこの法律は、こつこつと自家採種のタネを選り分けながらよりよい作物をつくろうと努力する農家や、試験場の人たちの苦労に報いるために1978年に成立した。生みの親である元農林水産省種苗課長が当時の紆余曲折を振り返ったインタビューはその精神を伝え、あるべき改正の道しるべとなる。
農家や育種家、さらに種苗メーカーなどまさに法律の対象となっている人たちのたくさんの生の声は、机の上の論理とは違う迫力と説得力に満ちたものだ。農家は、ただタネの購入代を節約するために採種しているのはない。時間も手間も、技術も道具も必要なタネ採りが、作物を育てる現場で一体、どんな役割を担っているのか。これを知らずして、法案の是非を語ることはできないように思う。
農家の人にとっても寝耳に水だったと言われる種子法廃止と違い、種苗法はまだ審議の途中だ。これは農家の問題ではなく、わが家の日々の食卓の問題なのだということを忘れずに、私たち消費者も議論のテーブルにつける準備をしたい。
『住む。』No.77(2021年春号) Sumu Square "Books"
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●『東京新聞』2021年3月6日「読書」
「…品種の海外流出と農家の自家増殖の制限をめぐる論点を整理し、農家の自家増殖の権利を守る道を探る」
●『日本農業新聞』2021年2月7日 あぜ道書店(書評欄)
「…育成権者と農家の自家増殖権を一体として進めようとした改正は、何の意味を持っているのかなどを問い掛ける」