漆滲出量を左右する樹皮の構造、
低発芽率10数%という状況のなか実生・分根・クローン苗研究の成果、
病虫獣害対策、漆染め・ナノ漆活用、漆林経営までを解説。
地域資源を活かす
植物特性と最新植栽技術
著者:田端雅進 橋田光ほか
定価:3,300円(税込)
ISBNコード:9784540172120
発行:2020/03
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:B5 136ページ
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《監修・執筆者》
田端 雅進(たばた まさのぶ)
国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所東北支所
橋田 光(はしだ ひかる)
国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所森林資源化学研究領域
《執筆者》
船田 良(ふなだ りょう)
東京農工大学大学院環境資源科学科 教授
渡辺 敦史(わたなべ あつし)
九州大学農学部 生物資源環境学科 准教授
小野 賢二(おの けんじ)
国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所東北支所
田中 功二(たなか こうじ)
地方独立行政法人青森県産業技術センター林業研究所
小谷 二郎(こだに じろう)
石川県農林総合研究センター林業試験場
升屋 勇人(ますや はやと)
国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所森林微生物研究領域
岡 輝樹(おか てるき)
国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所野生動物研究領域
林 雅秀(やはし まさひで)
山形大学農学部 准教授
本多 貴之(ほんだ たかゆき)
明治大学理工学部応用化学科 准教授
木下 稔夫(きのした としお)
地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター開発第二部
宮腰 哲雄(みやこし てつお)
明治大学研究知財戦略機構
石井 昭(いしい あきら)
漆芸家
山田 千里(やまだ ちさと)
明治大学研究知財戦略機構
久保島 吉貴(くぼじま よしたか)
国立研究開発法人森林研究整備機構森林総合研究所木材加工・特性研究領域
新谷 茂(しんたに しげる)
新谷工芸・能登草木の染め研究室主宰
■ 書評・ネットでの紹介など ■
----- 2020/8 -----
『森林技術』No.940 2020.8(一般社団法人 日本森林技術協会)「BOOK 本の紹介」
本書の内容を一言であらわせば「日本の漆のすべてがわかる本」である。2巻構成の第1巻は工芸、歴史、文化などの面からの漆の解説。第2巻は漆の材や育林方法など主に生物学の面からの漆の解説となっている。分厚い本ではないが読みごたえは十分。口絵や図表にも魅せられる。本書を読めばきっと漆が好きになるだろう。私は計2巻を通読して、安くはない本物の漆器を手に入れ、文字通りの宝の持ち腐れとならないよう大切に使いたいと思った。末永く使えることを考えれば、決して高くはないはずである。
「漆をどうやって精製するか?」「漆にどうやって鮮やかな赤や黒の色を与えるか?」「どうやって漆で精緻な文様を描画するか?」本書では、こうした漆利用の手法が地域によって少しずつ異なり、さまざまな手法が編み出されてきたことが克明に記されている。南部鉄瓶が錆びないのは漆が塗られているため、というのも恥ずかしながら本書で初めて知った。また、漆が蜜蜂の蜜源にもなり、韓国ではなんと漆の材を食用に使うというのも初耳であった。
本書は実用の書である。国産漆の増産が求められている今、特に第2巻の内容は実用的で、漆の栽培に関わる技術者には大いに役立つであろう。一方で本書は、地域の漆文化を伝承する書でもある。読み進めていくうちに、地域の漆文化保全のために組織的な活動が行われていることを知り安堵するとともに、漆掻きの道具を作る鍛冶職人が浄法寺町にお住まいの方お一人だけという現状を知り不安にもなった。どうにか将来に技術を伝承してもらいたいものである。
技術者に限らず少しでも多くの人が本書を手にされ、漆に関する教養にふれてほしいと願う。漆=Japan という説もある。海外からのゲストに、ホストとして漆のことをきちんと説明できるようにありたい。そう思って、早速2回目の通読を始めたところである。(森林総合研究所/正木隆)