伝統野菜をつくった人々 「種子屋」の近代史

阿部希望 著

今日のF1品種につながる固定種野菜を育成し、
その品質維持や流通を担った者たちの足跡。
「固定種誕生」をめぐる歴史研究の労作。

伝統野菜をつくった人々
「種子屋」の近代史

著者:阿部希望
定価:本体3,500円+税
ISBNコード:9784540141959
発行:2015/12
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:四六 264ページ

本を購入する(田舎の本屋さん)まえがき(PDF)

かつてつくられた固定種野菜の細密画
(水彩 1919~1953頃に旧東京府農事試験場が画家に依頼して記録させたものと思われる)

ダイコン 方領
ニンジン 三寸
キュウリ 左から落合、馬込、針谷
ナス 左から早生山、中生山、晩生山

(いずれも東京都農林総合研究センター所蔵)

著者

阿部 希望(あべ のぞみ)

1984年、栃木県生まれ。筑波大学大学院生命環境科学研究科博士後期課程修了。博士(農学)。
日本学術振興会特別研究員(PD)及び学習院大学史料館臨時職員、
国立公文書館つくば分館非常勤職員を経て、
現在、近現代の農産物種子を対象に研究を継続中。
本書のもとになっている論文で、2010年度日本農業史学会賞(奨励賞)、
また2016年度日本農業史学会賞(学会賞)を本書発行後に受賞。

目次

  • Ⅰ章 かつて「種子屋」(たねや)と呼ばれる人々がいた
    •  一、日本の野菜生産を支えた「種子屋」
    •  二、種子屋史料の発見
    •  三、本書の構成
    •  ◎育種用語と採種技術
  • Ⅱ章 買われる野菜、売られる種子 野菜と種子の変転、江戸から近代へ
    •  一、都市の成長と近代の野菜生産の特質
    •  二、拡大する固定種種子の需要
    •  三、民間主導の野菜育種
  • Ⅲ章 種子の大量生産、大量流通を担う 江戸東京の種子問屋、榎本留吉商店
    •  一、種子問屋街の形成
    •  二、原種の育成と品質管理
    •  三、販売用種子の大量生産と仕入取引
    •  四、種子の通信販売
    •  五、作場の遠隔地化と品質問題の発生
  • Ⅳ章 採種管理を請け負う「種子屋」 作場管理の代行者、野口平蔵(橘屋種苗店)
    •  一、新たな作場となった東京府北多摩郡
    •  二、採種管理人の登場
    •  三、採種管理人の仕事
    •  四、採種管理人から種子問屋へ
  • Ⅴ章 村を歩き、市で売る在郷の「種子屋」 掛売り信用販売で地域密着、小売行商・種仁商店
    •  一、新潟県の野菜生産
    •  二、種子の行商人
    •  三、多様な小売形態で農家ニーズに対応
    •  四、販売先農家の多品目野菜生産
  • Ⅵ章 今に活きる「種子屋」の功績
    •  一、近代における種子屋の展開
    •  二、現代に引き継がれる技術とシステム
    •  三、種子屋研究の意義と広がり

書評・反響

■ SNS (書名による検索結果) ■

Facebook(要ログイン)  |  Twitter

 

 

----- 2016/6  -----

『農業と経済』2016年6月号 ブックガイド

近代農業発展の影には「種子屋(たねや)」と呼ばれる人びとがいた!
評・たねだね在来種研究所 前田知里

 今、消えつつある伝統野菜が再び見直されつつある。各地で受け継がれてきた伝統野菜から、F1品種の親となる「固定種」を作り出し、近代農業の発展を支えたのは「種子屋(たねや)」と呼ばれる人びとであった。彼らは、野菜の育種から生産、流通までを担い、大きな貢献をしてきたにもかかわらず、注目されることなく見過ごされてきた。
 本書は、3つの種子屋に残された資料を8年もの歳月をかけて読み解き、種子屋の役割と展開に注目した日本ではじめての歴史書である。農学出身の筆者ならではの視点で、育種・経済・農業史と分野横断的な分析をもとに新たな近代の農業史像に迫る大作であり、2016年度「日本農業史学会賞」を受賞している。
 I章とII章では、江戸時代中後期から昭和にかけての種子屋の展開や野菜生産の全国的な動向が示され、III章からV章が種子屋の分析となる。3つのタイプの種子屋に残された資料から種子屋の役割と変化の流れを読み解く。III章では東京府北豊島郡巣鴨村の「種子問屋」を、IV章では東京府北豊島郡調布町の「採種管理人」、V章では新潟県北蒲原郡葛塚町の「種子小売商」を取り上げる。以上を総括し、VI章では現代に活きる種子屋の功績と可能性を提示する。
 時代の変化とともに種子屋は仲買商、小売商、地方問屋と分業化が進展していく。親子のような関係を築いた小売商と問屋。薬屋と同じように、種子屋も行商が行われ、「オオヤケ」と呼ばれる農家の宿に「置種」を預けていった。それぞれの種子屋にはドラマがあり、その展開を相互の関係性に触れながら、仕入帳簿や種苗カタログ、苦情はがきなど貴重な一次史料をもとに、タネヤと呼ばれた人びとの活躍が活き活きと描かれている。
 また、種子屋の研究は単なる歴史分析ではなく、在来産業としての農業の展開を見直すとともに、自給率が低迷するなか、再び注目されている伝統野菜のストーリー性付加につながるものであり、途上国における技術支援など将来のヒントにもなりうるものであると呼びかける。
 種子屋が担ってきた野菜の育種や生産、流通は現代に活きている。一方で、種子生産の大部分が海外でおこなわれ、国内の採種農家の高齢化にともない、受け継がれてきた技術が失われようとしている今、種子屋の役割が見直されるときではないか。研究者だけでなく、農作物の生産・流通にかかわる人や、食に関心のある消費者にもぜひ知ってもらいたい。

 

***** リンクはありません) *****

・『経済史学』52巻(2) 2017/9 中島正道氏(愛国学園大学)評

・『歴史と経済』59巻(3) 2016/6

・『日本農業新聞』(2016/5/15) 西尾敏彦氏(元農林水産技術会議事務局長)評

 

各作品ページのURLをQRコード化したリスト(PDF)はこちら

topへ