冬の間、田んぼに水を溜めたままにする冬期湛水水田は、
生物多様性を高め、化学肥料や農薬に頼らない稲作を可能にする。
長年、田んぼの生きもの調査に取り組む著者が全国を訪ね、
個性的な実践とその成果を描く。
生きものにぎわう田んぼの世界
岩渕成紀 著
定価:2,750円(税込)
ISBNコード:9784540222061
発行:2025/9
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:四六 400ページ
稲刈り後の田んぼに水を入れ、冬の間も湛水しておく、あるいは湿地状態にしていくことを冬期湛水水田という。著者らは冬期湛水水田を「ふゆみずたんぼ」と呼びならわし、全国で普及・啓発に努めてきた。「ふゆみずたんぼ」は稀少な動植物の住みかとなり、代替湿地として渡り鳥の中継地となるなど、生物多様性の観点からも注目されている。さらに、「ふゆみずたんぼ」ではイトミミズによってトロトロ層が形成されることで、化学肥料や農薬に頼らない稲作が可能になることがわかってきた。 本書は宮城県を拠点に「ふゆみずたんぼ」での生きもの調査に取り組んできた著者が、全国の実践者を訪ね、多様な取り組みを聞き取った記録である。東日本大震災からの水田の復興における「ふゆみずたんぼ」の活用や、生物多様性や渡り鳥の保護になかかわる国際条約において、水田の価値を位置づけるなど、著者自身の取り組みも詳しく紹介されている。
ラムサール条約登録湿地・蕪栗沼で、日の出とともにいっせいに飛び立つ雁の群れ (撮影:岩渕 翼)
雁や白鳥が憩う「ふゆみずたんぼ」
気仙沼市立大谷小学校の学校水田での、東日本大震災からの手作業での復興作業
小学生による田んぼの生きもの調査
世界農業遺産 山居居久根の風致
岩渕 成紀(いわぶち しげき)
NPO法人「田んぼ」特別顧問(元理事長)。宮城教育大学教育学部卒。小中学校教諭を経て、1990年兵庫教育大学生物学科修士課程修了。仙台市科学館学芸員、宮城教育大学環境教育実践センター客員教官、2002年より宮城県立田尻高等学校教諭、2006年退職して、NPO法人田んぼ設立。 田んぼの生きもの全種リストプロジェクト幹事、日本雁を保護する会幹事、NPO法人蕪栗ぬまっこくらぶ理事、民間稲作研究所理事、NPO法人メダカのがっこう顧問などを歴任。
専門とする分野は水田生態学、歴史・地理生態学、有機農業、地域農業システム、生活文化・農村文化、水田の生物多様性、環境教育など。
主な著作に『ふるさとを感じるあそび事典』(共著、山田卓三編、農文協) 『ポケット版 田んぼの生きもの図鑑・動物編』(編著、NPO法人生物多様性農業支援センター) 『田んぼの生きものおもしろ図鑑』(共著、湊秋作編、農文協) 『自然を捨てた日本人 破壊と保全・復興の谷間で』(共著、北原貞輔・石井薫編、東海大学出版会) 『地域と環境が蘇る 水田再生』(共著、鷲谷いづみ編著、家の光協会)
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●『日本農業新聞』2025年11月23日 あぜ道書店(読書欄)