林ヲ営ム 木の価値を高める技術と経営

赤堀楠雄 著

30年にわたる
現場取材から見えた林家の実像、
日本林業の本当の可能性
木を大切に育て続ける林業にこそ未来がある

林ヲ営ム
木の価値を高める技術と経営

著者:赤堀楠雄
定価:2,200円(税込)
ISBNコード:9784540131042
発行:2017/10
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 216ページ

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林業地・智頭で、三世代が力を合わせて山づくりに従事している専業の自伐林家。
国内最古の林業地・吉野。140年生のスギ林での形付け(間伐のための選木)作業。
育林の専門家は200本もの鉈を駆使し、樹種や枝に合わせて完璧な枝打ちを施す。
木の価値を高める大工の技術が廃れないようにすることは、山づくりの重要な条件。

(写真撮影 赤堀楠雄)

目次

プロローグ――ある林家の営みから

  • 第1章 木の価値を高めて林業を元気にする
    • 1 林業は「ソート」を担えるか
    • 2 良質材のマーケットを拡大する
    • 3 「品質の安定供給」を目指す
  • 第2章 価値の高い木を育てる
    • 1 答えは山にある
    • 2 究極のソート――吉野の形付け
    •  木の寿命まで育てる――岡橋清元さん(山主・奈良県吉野町)
    •  垢抜けた山をつくる――小久保昌巳さん(山守・奈良県川上村)
    •  育林は生活そのもの――民辻善博さん(山守・奈良県川上村)
    • 3 撫育一筋30余年――譲尾一志さん(兵庫県豊岡市)
    • 4 挑戦し続ける林業経営――速水林業(三重県紀北町)
    • 5 良い山づくりが良い人材を集める
    • 6 丸太は商品――ポイントは造材
  • 第3章 木を育て続ける――「自伐林家」という生き方
    • 1 「自伐は儲かる」のか?
    • 2 自伐林家の営み
    •  林業で食べ続けるための技術と経営――菊池俊一郎さん(愛媛県西予市)
    •  雪に強い優良大径材を次代に託す――八杉健治さん(福井県福井市)
    •  木材と花卉の複合経営で活路を開く――大江俊平さん・英樹さん(和歌山県田辺市)
    •  父祖から受け継いだ山を守る――奥山総一郎さん(岡山県真庭市)
    •  「晩生の木」を育て続ける――栗屋克範さん(熊本県山都町)
  • 第4章 木の価値を高める木材マーケティング
    • 1 製材品はなぜ売れないのか
    • 2 ユーザーアクセスのあり方を考える
    • 3 木材のスタンダードを機能させる
    • 4 良質な無垢材利用へのインセンティブを高める
    • 5 木材業界の人材を育成する
  • エピローグ――じいちゃんの山仕事

書評・反響

■ 読者カードから ■

----- 2021/8 -----

 各地の林業家のその土地土地での育林法が紹介されていてよかった。木を大切に育てるという視点はよかった。(東京都 公務員 男性 50代)

 

----- 2017/12 -----

 山林、木材に対して愛情を持って働いている人がたくさん紹介され勉強になりました。良い木を育てることにもっと多くの人がかかわってくれれば良いのですが…。私も退職後きこりをしていますが、もっと効率的に搬出し、地域で森林を管理しようと計画しています。伊賀で講演してもらえればありがたいのですが…。(三重県・60代・男性)

 

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----- 2018/2/10 -----

『森林技術』2018年2月号 本の紹介

 この本は、木材の質について詳しく、分かりやすく説明しながら、山側の育林過程において、よりよい材質の木を育てることの重要性を、各地の林業家に視点を置きながら訴えている。その内容は日本の森林・林業と木材産業の関係のあり方を根本から問うものである。
 日本林業の苦境の要因の一つは、木材価格が川下の大型木材産業に強く支配され、安い材価により林業家の意欲が削がれてきていることにある。育林と伐出のコストダウンを強いられ、今の採算ばかりを求める粗い作業で、材質や森の質が犠牲になっていく、そのような「引き算」ばかりでは、マイナススパイラルに歯止めがかからない。人も育たないし持続性がなくなり、次世代以降に対して無責任である。少しでも高く売れる木を育て、そのような木が使われるようなマーケットをつくる、そんな足し算、掛け算にもつながる取組が大事である。これからはリフォームや内装材の市場が伸び、無節性の高い板材などの需要が増えるはずである。
 生物材料である木の価値を創出するためのポイントは「選別・仕分け」であるという。これはまさに至言であり、苗木の選別から、間伐の選木、造材、製材、加工に至るまで、すべてに通じるものである。この中で山側での選別・仕分け作業が犠牲になっている。加工技術ばかりで商品の価値を高めるのではなく、育林過程で価値を高めていくことが大事である。それにより林業と木材産業の両方から見た費用対効果が高められ、山村の雇用が高められる。林業と木材産業の協調が大事であり、それは農山村と都市の関係を含めた日本社会のあり方にまで連なる大事な考えである。本文の表現には、私の考えも少し混入したかもしれないが、著者の考えの骨子に私は全く同感であるため、それはおかしなことではない。この本に私は勇気づけられたが、皆さんにも是非読んでいただきたい本である。(元森林総合研究所/藤森隆郎)

 

----- 2018/1/23 -----

『農機新聞』2018年1月23日 書評

 「山の木を切ってはいけない。環境を守れ」と声高に主張する人がいる。でもその人がどれほど林業のことを知っているのだろうか。自分自身も含め林業の実態をよく知らない人たちにとって、現在の林業がどのように営まれ、どんな問題を抱え、いかなる可能性を秘めているのかを知るための格好の一冊が本書『林ヲ営ム』だ。
 全国各地には林業で生計を維持するあまたの林家がいる。30年にもわたり林業現場での取材を続けている著者が、各地で丹念に拾った林家の作業の実態、林業にかける思いが本書に詰め込まれている。林業の形には林家の数だけ多様性があることを教えられる。
 「(枝打ちした切り口に)蟻が登ってくるだけでも汚れるんですわ。蟻だってたくさん歩いてきたら、けっこう泥がつきよるんですよ」という言葉は現場でしか聞けない言葉だろう。想像したこともなかった。
 しかし、社会情勢の変化とともに林業を取り巻く状況は厳しくなっている。著者の願いは「林家の人たちに、いつまでも林業を続けてほしい」であり、その気持ちが本書の根底に流れていることに気がつく。そのために重要なことが「木の価値を高めること」であると主張する。具体的に何ができるかを関係者がそれぞれの立場で考えてほしいとしている。それは読者にも問われていることだろう。
 林家と農家は不断の創意工夫によって生き物を育て収穫するところは共通しているが、大きな違いはタイムスケールである。農家は自分で種を蒔けば、収穫は自分で行う。林家の場合は苗を植えても収穫は子供や孫の代になる。こんなにも息の長い営みが他にあるだろうか。「子どもの日いちばん好きな山に行き まだ見ぬ孫へ栗の穂を接ぐ」という林家の短歌が心情を見事に表している。
 林業は収穫だけではない。収穫を迎えるための植林や育林が不可欠だが、それらがセットになっての林業だ。植林が始まったのは500年前の室町時代といわれる。陰りは見えるものの経済大国といわれるようになった日本は50年ほどしか経過していない。これがいつまで続くのか。100年、いや50年先の社会すらどうなっているのかを予測できない。500年続いている「林ノ営ミ」には、これからの社会をどうすべきなのか、その方向性を示すものがある。

 

----- 2017/12/12 -----

『日本木材新聞』2017年12月12日 書評

 林材ライターの赤堀楠雄氏による『林ヲ営ム 木の価値を高める技術と経営』が農山漁村文化協会から発刊された。
 赤堀氏は林材新聞の記者として林材業界の取材を始め、1999年に林材ライターとして独立。本書には、約30年にわたる現場取材から見えてきた林業の課題を浮き彫りにし、国が進める林業の成長産業化とは一線を画した現場からの提言が盛り込まれている。
 赤堀氏は精力的に各地の林家を取材し、家族や現場の作業者などの細かい技術を丁寧にルポしている。
 林業の成長産業化や木材自給率の向上など、国が打ち出す様々な施策によって、木材自給率は34.8%まで回復してきた。しかし、木材自給率を引き上げたのは合板や大型製材、バイオマス発電など木材の質よりも量を重視した木材加工業やバイオマス発電事業によるもので、木材自給率が高まっても林家の収入の増加や経営改善にはつながりにくい。
 赤堀氏は、植栽、間伐、枝打ちの仕方、造材、丸太の仕分けなど現場での木材の付加価値向上に向けた作業の仕方を克明に取材し、間伐による林内の密度コントロールの仕方や枝打ち作業の仕方など、それぞれの林家が工夫してきたやり方を文章に残している。
 林家では良い手入れをして、それぞれの用途を考えながら、丸太の価値を高める工夫をしている。その一方で、丸太価格の下落を受けて、育林の方法を効率的に進めながらも、品質は下げない取り組みや、伐採経費が懐に残る自伐林家の事例を紹介し、今後の日本の林業のあり方を問うている。
 このほか、林材ライターとして林家の人たちと家族ぐるみで長年にわたり培ってきた人間関係や、林業への共感から聞き出すことができた貴重な内容を満載している。
 最終章の「木の価値を高める木材マーケティング」では、様々な提言が記されているが、日本の林業の問題を解決できる答えは見付かっていない。本書を「赤堀楠雄氏の30年に及ぶ林材ライター業の集大成」と紹介するのに迷ったが、林家の取材を通して世に問うべきことは多いと改めて考えさせられた。

 

----- 2017/12/1 -----

『現代林業』2017年1月号 INFORMATION「BOOK」

 月刊『現代林業』において、「木材トレンドを解く」を連載中の赤堀氏が、山間の林家の営みにスポットを当て、丹念な取材と豊富な資料にもとづき、林家の実相を活写した一冊。
 苗木選びから造材まで、育林・生産の各段階で選別・仕分けを徹底して木の価値を高めている各地の林家の技術と経営手法、木材マーケティングの要諦を丁寧に紹介している。(以下、登場自伐林家を列挙=省略)

 

----- 2017/11/8 -----

『林政ニュース』(発行:日本林業調査会)第568号「新刊紹介」より

 著者は老舗業界紙『林材新聞』で"修行"を積んだ後に独立。一貫して現場目線で取材を続けてきた成果を1冊にまとめた。林家に寄り添い、"等身大"の将来方向を描き出している。

 

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『林業経済』2018年11月号書評 …本書が提起した担い手に関するきわめて重要な議論は、林業界としても、しっかりと受け止めて活発な議論を交わすべきである

『日本農業新聞』2018年2月11日 …著者は、『木の価値を高めること』こそが、森林・林業・木材に関わる全ての者が取り組むべきことだと訴える

『奈良新聞』2017年11月12日 …取材で見えた実像と可能性

関連情報

----- 2005/2/25~2011/7/2 -----

「赤堀楠雄の林材レポート」連載しました

国産無垢材を使った、職人の顔が見える家づくり「職人がつくる木の家ネット」

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----- 2008/3~ -----

著者が「森先案内」となって日本の森の「今」を伝える『あの人の森は?』

森の暮らしと心をつなぐ「私の森.jp」の好評連載(著者が多くの記事を執筆)

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