食べるとはどういうことか

藤原辰史 著

人間は「ホラーなチューブ」?「生きもの殺し装置」?
「食べる」を深く考えれば考えるほど、
「人間とはなにか」が見えてくる。
京大のフジハラ先生と12歳~18歳の中高生による、
白熱の「食と農の哲学」ゼミナール。

★かんがえるタネ★

食べるとはどういうことか

世界の見方が変わる三つの質問
著者:藤原辰史
定価:1,650円(税込)
ISBNコード:9784540171093
発行:2019/3
出版:農山漁村文化協会(農文協)
協力:パルシステム
判型/頁数:四六 176ページ

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表紙カバー・本文イラスト:堀 道広

著者

藤原 辰史(ふじはら たつし)

author

1976(昭和51)年北海道生まれ、島根県育ち。島根県立横田高校、京都大学総合人間学部卒業。
2002年京都大学大学院人間・環境学研究科中途退学。京都大学人文科学研究所助手、東京大学農学生命科学研究科講師を経て、2013年4月より京都大学人文科学研究所准教授。
専門は農業技術史、食の思想史、環境史、ドイツ現代史専攻・農業史。
著書『ナチス・ドイツの有機農業』(柏書房、2005年)、『カブラの冬』(人文書院、2011年)、『ナチスのキッチン』(水声社、2012年/増補版共和国、2016年)、『稲の大東亜共栄圏』(吉川弘文館、2012年)、『トラクターの世界史』(中公新書、2017年)、『戦争と農業』(集英社インターナショナル新書、2017年)。
最新刊は『給食の歴史』(岩波新書、2018年11月)。
第1回日本ドイツ学会奨励賞、第1回河合隼雄学芸賞、第15回日本学術振興会賞を受賞。

目次

書評・反響

■ 読者カードから ■

----- 2023/11 -----

私は食についてたいへん興味があり、以前からこの本は欲しいものリストに入れていました。本は本屋さん応援のため店で買おう!と決めています。息子は超がつく偏食! 沢山読みあさり悩んだ時期にこの本を思い出し購入。そもそもの食べることに子ども自身興味がわくにはどうしたら…と初めはそこも知りたく、読むうちに、藤原先生の話の進め方の面白さ!!! 哲学とは…そこも楽しく知ることができて、普段の生活に取り入れることができる!と思い、子どもと話をする楽しさが更に増えました。とくに食べるより「出す」方に子は興味津々!堀さんのイラストも好きで、子どもも分かり易かったようで、楽しく見ていました。6歳です。深く掘り下げて考える楽しさを知れた1冊となりました。答えを、今すぐ!!コスパ重視の今の世の中、ゆっくり考えを発酵させるような皆のそれぞれの意見から見えてくる世界、じっくり考えたからこそ見える視点にも気づかせてくれて、最後まで楽しく読むことができました! いい本を作って下さりありがとうございます! 食の想い出に、人とのつながりが見える。印象的でした。食べることのプラス面はよく見ます。先生のいうマイナス面にも目を向けていけたらと思いました。これからも食に関する本を楽しみにしています! 趣味から歴史を見るといい!その話も面白かったです!あとは、答えは様々(答えが出なくても)それでいいんだなと思えました。考えるキッカケをありがとう、です! まさに生きるヒント!

(山形県 自営業 40代 女性)

 

----- 2021/1 -----

とても面白かったです。内容は勿論ですが、「哲学」が面白かったです。勉強することはやはり面白いと再確認しました。コロナ以来、益々藤原ファンになっています。

(静岡県 自由業 70代 女性)

 

----- 2020/9 -----

僕はうちが農家で、食についての本をたくさん読んでいたのですが、「生きもの殺しチューブ」という発想はなくて、「なるほど!」と納得しました。近い未来には「1日分の栄養がとれる食べ物」ができる。しかし僕はそれでは「食の文化」がなくなってしまい、それは勿体ないことだと思いました。

(東京都 中学生 男性)

 

----- 2020/6 -----

藤原先生の著作を拝読するのはこちらが2冊目です(1冊目は『分解の哲学』)。子供たちとの議論の内容を読んで、追体験(追思考)いたしました。考える楽しさを改めて確認しました。

(東京都 会社員 60代 男性)

 

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----- 2021/4 -----

「食べる」ことから「人間」を考える

 小学生から高校生まで8名の子どもたちと農業史を専門とする著者が「食」をテーマに語り合う。「おいしいとは?」「どこからどこまでが『食べる』なの?」など、多様な観点からの著者の問いかけに、子どもたちは考え、自分の言葉で語り、対立意見も交えてさらに考えを深めていく。身近な「食」への新たな視点を得るとともに、思考を深める対話の醍醐味もたっぷりの白熱のゼミの記録。

生活クラブ生協『本の花束』2021年4月3回C週

 

----- 2020/7/13 -----

July 13, 2020

和田明日香 公式ブログ

 

----- 2019/8 -----

『食育フォーラム』2019年9月号(No.221) ザ・情報ツウ/news & book review

 12歳から18歳の子どもたちと「食べること」について語り合い、考えを深め合った対談の記録である。テーマを深めるにあたって、藤原先生は子どもたちに3つの問を投げかける。
 ①いままで食べたなかで一番おいしかったものは?
 ②「食べる」とはどこまで「食べる」なのか?
 ③「食べること」はこれからどうなるのか?
 さあ、みなさんはどう答えるだろうか。じつは①の問いは、藤原先生が大学の専門課程で講義をされるときに、まずはじめに学生さんに問いかけるものだそうだ。用紙を配り、名前、所属、出身地、選んだ食べ物とその理由を書かせる。これまでの人生経験から何か食品を1つ選ぶことも、またその理由を考えて書くのもじつは意外に難しい。「なぜ?」「どうして?」と思考が動き出し、言葉にならないものを言葉にしようとする困難さや思い通りに伝わらないもどかしさも感じる。これはアカデミックな環境で学び、その成果を人に伝えていく訓練の入り口として、学生たちにはほどよい刺激になるそうだ。
 ②の問いも考えれば考えるほど面白い。食べ物は胃袋に落ちてしまえばそれで終わりか、または便までか、あるいはそのもっと先…。その境を決めるのはじつはとてもむずかしい。「食べるということ、食べものは、生きているものたちによってにぎわっている世界のなかの、ものすごい大きな循環の一部にすぎない」。さらに消化について考えていくと、じつは腸内細菌という自分の中の他者の力によって、その大切な部分が担われていることもわかる。食べるということは、人間ひとりでやっているわけではないのだ。③の問いは読んでのお楽しみ。
 このように子どもたちとの真摯な対話から、思考がどんどん広がっていくのは楽しい。決して答えはすぐに出ないものばかりだが、この「問いに耐える」ということも、今後、「主体的・対話的で深い学び」で子どもたちに伝えていかなければならないことのように思う。

 

----- 2019/7 -----

全国農業共済協会(NOSAI協会)『月刊NOSAI』2019年7月号 「自著自薦」

 この本は、とても珍しい本だと思います。小学校から高校生まで8名の子どもたちとのゼミの記録なのですが、これだけ年齢幅が広いゼミは初めてのことでした。テーマは、「食べること」。いままで食べたなかで一番おいしかったものは? 「食べる」とはどこまで「食べる」なのか? 「食べること」はこれからどうなるのか? という三つの問いを軸に、シナリオなしのぶっつけ本番で自由に議論したものです。
 食べることは毎日することなので、なかなかじっくり腰を据えて考えるテーマではありません。寝ることやトイレに行くことに対し疑問を普段抱かないのと同様です。ところが、睡眠やトイレと同様に、食は考えれば考えるほど深みにはまっていくようなテーマなのです。
 子どもたちと議論しても、当然、多数の答えが出てきます。この多数の答えを競わせるというよりは、共存させたり、違いを明確にしたり、結合したりする作業が、学問の基本です。たとえば、本書は、人間が食べることと動物が食べることは違う、という意見と、違わない、という意見が登場します。それぞれになっとくできる説明なので、私はあえて結論を急ぐことをしませんでした。みんなに考えるタネをまくことを何よりも大切に考えました。こうやって、答えのない問題を考えることの楽しさを味わうことを私は若い人にこそどんどんやってほしいと願っています。
 本書は、ゼミの様子だけでははく、私のエッセイも入っています。中学生でも読める内容なので、ぜひ手にとってみてください。そして本書の魅力として、表紙にもあります挿絵をあげなければなりません。金継ぎ(割れた皿を修復する技術)のワークショップをされている漆職人で漫画家の堀道広さんの優しくもシュールな絵をぜひ楽しんでください。

 

----- 2019/7 -----

当たり前のことを切り口にして見えていなかったものが見えてくる

『子どもの本棚』(一般社団法人 日本子どもの本研究会)
2019年7月号 今月の書評

 人間は「食べる」という行為なしには生きられない。しかし、あまりにも日常的な行為のために何気なく行っていたり無関心であったりする。この「食べること」を軸にしてとことん哲学してまとめたものが本書である。哲学するのは京都大学准教授藤原辰史さんと八人の中高生。藤原さんは『ナチスのキッチン』『戦争と農業』などの著書で知られ、新刊には『給食の歴史』がある。企画したのは生協グループのパルシステムと農文協。十二歳から十八歳までの八人はパルシステムの組合員・職員の家族とある。座談会の「まとめ」とはいっても、まるで座談会の傍にいるようなライブ感覚で読める。
 副題にあるように藤原さんは三つの質問を放つ。
 【第一の質問】いままで食べたなかで一番おいしかったものは?
 【第二の質問】「食べる」とはどこまで「食べる」なのか?
 【第三の質問】「食べる」ことはこれからどうなるのか?
 本書は「質問」、質問に対する「解説」、実際に行われた「対話」という構成からなり、ところどころにコメントが書かれている。
 第一の質問はやさしそうで案外難しい。なぜなら「おいしい」はどんな気持ちを表す言葉かなどおいしさの基準を確定する必要があり、感覚の基準設定は難しい。また、かなりの数からの選択となり、これもなかなか困難である。八人はサッカーで優勝した時にお母さんがつくってくれる新じゃがのフライドポテト、お好み焼き、種を七年間も自家採種し工夫して育て続けたトマト、あご出汁のみそ汁、育てたキュウリに味噌をつけたものなどをあげている、さすがに食材にこだわる家庭の子どもたち。「おいしい」は「母親が多く登場する型」「あの時に食べた○○などの状況依存型」などに分けられることが示される。
 第二の質問は、「食べるってどういうことなのか」、「食べる」と栄養を体に「入れる」の違いは何かから始まり、哲学という行為は「答えのないものに向かって自分の持っている言葉を駆使して順を踏んで考え抜く」ことだと励まされながら、八人は人間と動物の食は同じなのか、人間の食は文化の要素があるのではないかと進めていく。藤原さんは食べる行為は人の体で完結するのではなく、やがて排泄されたものが下水道から下水処理場で微生物処理され、畑や自然に戻るという大きな循環の中の一部に過ぎず、通過点のようなもの、また人間は腸内に棲む沢山の菌に消化を助けられてもいる、生きるということは何かを殺しそれを食べてしか生きられないのに、現代は食べる行為の場とそれを提供する生産の場が切離されてしまっているため、それがわからなくなっていると語っていく。
 「それでは未来の食はどうなっていくのか」と第三の質問へ進んでいく。
 第二の質問で出された食の文化は、食べるという生物的な行為の上にあり、簡単に食べられる「人間フード」のような食べもので済ませたらどうなっていくのか。
 読み進めていくと、藤原さん自身が中高生の打ち返してくる答えを楽しみ、互いに響き合っていく様子が伝わってくるし、読者もまた随所で知的興奮を味わえる。
 それぞれが話すことを縦糸とするなら、ひとり一人の発言を意味付け、関連付け、更に斬新な視点を提供しながら次の段階に引き上げていく藤原さんの話は横糸であり、座談会が終わったとき、それは一枚の布を織り上げたような印象を受けた。
 長らく小学校で授業をしてきた者にとっては、一年間に何回かこのような授業が展開できたなら、子どもたちは学びの世界の奥深さを感じ取り、問い続ける力を培えるのではないかと考えさせられる一冊でもある。

(田揚江里:元東京都公立学校司書教諭)

 

 

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●『女性自身』2023年8月22・29日号 「今週のあなたを開く本」
 読賢者4人のリレー書評 作家・絲山秋子さん

 ちょっとした飛躍が思いもよらない場所に

●Z会『エブリスタディ アドバンスト 小6』2023年3月号 今月のおすすめ 読書案内
 「今回は、食べることについて、深く考えられた本をしょうかいするよ」

●NHKラジオ第一『すっぴん!』2020年1月10日「源ちゃんのゲンダイ国語」
 金曜日のパーソナリティー・作家の高橋源一郎さんが選んだ本を紹介するコーナーでとりあげられました。

●『通販生活』2019年冬号 著者インタビュー
 食から始まる思考の旅は知的興奮に満ちています。

●『中日新聞』2019年5月26日 教育欄「図書室」
 …参加者には「目の端には野性味が宿り、口元に知的興奮の跡」が…

●『日本農業新聞』2019年5月26日 「あぜ道書店」(読書欄)
 食を巡り、とことん哲学している画期的な本だ。

関連情報

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