生活工芸双書 漆1

室瀬和美、田端雅進 監修/阿部芳郎、宮腰哲雄ほか 著

植物的な特徴、注目の縄文時代の漆利用、
蒔絵・螺鈿等の漆工芸、漆液の採取と精製、
漆液以外の漆蝋、ウルシ染め等も解説。

地域資源を活かす

生活工芸双書 漆1

漆搔きと漆工 ウルシ利用
著者:室瀬和美、田端雅進ほか
定価:3,300円(税込)
ISBNコード:9784540171161
発行:2018/03
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:B5 152ページ

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漆液の精製 撹拌しながら水分を飛ばし、きめ細かくして透明度を出す
浄法寺産漆の荷姿(岩手県二戸市)
輪島塗「四季草花蒔絵沈金棚」
ウルシ染め 絞り染めした染色布

著者

阿部 芳郎(あべ よしろう)

明治大学文学部教授

室瀬 和美(むろせ かずみ)

目白漆芸文化財研究所主宰、重要無形文化財工芸技術漆芸蒔絵技術保持者

永田 智世(ながた ともよ)

目白漆芸文化財研究所

橋田 光(はしだ こう)

国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所 樹木抽出成分研究室

宮腰 哲雄(みやこし てつお)

明治大学名誉教授、明治大学研究知財戦略機構研究推進員

高田 和徳(たかだ かずのり)

岩手県一戸町御所野縄文博物館館長

姉帯 敏美(あねたい としみ)

岩手県二戸市漆振興課長

竹内 義浩(たけうち よしひろ)

竹内工芸研究所

田端 雅進(たばた まさのぶ)

国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所東北支所 産学官民連携推進調整監

近藤 都代子(こんどう とよこ)

元文化庁文化財部伝統文化課主任文化財調査官

住谷 晃一郎(すみたに こういちろう)

香川県政策部文化振興課文化芸術グループ美術コーディネーター

 

目次

口絵

はじめに

<図解>代表的な漆器産地

  • 1章 植物としてのウルシ
  •  ウルシの起源、分類及び特徴
  •  ウルシの植栽と更新
  •  ウルシの系統と識別
  • <図解>漆にかかわる縄文時代の遺跡
  • 2章 漆利用の歴史
  •  縄文時代の漆工芸
  •  遺跡における漆の利用形態
  •  ・山形県押出遺跡(縄文時代前期)
  •  ・埼玉県デーノタメ遺跡(縄文時代中期)
  •  ・青森県是川中居遺跡(縄文時代晩期)
  •  漆工芸からみた縄文時代の地域性
  • 3章 漆の利用と技法
  •  漆液の利用ー接着剤と塗料
  •  精製漆の種類と名称
  •   生漆と透漆・黒漆、有油漆と無油漆/木地蝋漆(木地呂漆)/梨子地漆(梨地漆)/朱合漆/黒蝋色漆(黒呂色漆)/花塗漆(塗立漆)
  •  色漆の種類
  •   黒漆/赤漆/黄色漆・緑漆/白漆
  •  素地の選定と木地づくりの技
  •   さまざまな素地に塗られる漆/木材の特色/木地づくりの技法/代表的な技法
  •  下地と漆塗り
  •   髹漆/下地方法/乾漆技法/下地をしない塗りの技法/仕上げ技法
  •  漆工品の装飾技法
  •   加飾技法/蒔絵とは/平文と平脱/貝を使う螺鈿の技法/漆絵/密陀絵/刀で表現する技法
  •  漆のこれまでといま
  •   無形文化財の保護形のない「わざ」の維持と継承を支えるもの
  • <囲み>漆工にかかわる刷毛と筆
  • 4章 代表的な漆器産地とその技術
  •  各産地の歴史と特色
  •   各地域への漆工の広がり/東北~九州地方
  •  輪島地方(石川県)
  •  津軽地方(青森県)
  •  飛騨高山地方(岐阜県)
  •  会津地方(福島県)
  •  高松(香川県)
  • 5章 漆液以外の利用
  •  ウルシの(漆液以外の)利用
  •   スローライフの中にウルシ資源の活用を/まるごと植物としての利用/ウルシコーヒー/ウルシ酒/漆の抗菌活性
  •  ウルシ材の利用
  •   枝・樹皮の利用/ウルシ染め
  • <囲み>ウルシの枝や樹皮 韓国の伝統料理
  •  ウルシの果実の利用ー漆蝋
  •   漆蝋の歴史/製蝋の工程/漆蝋文化の掘り起しと蝋搾りの再現
  • <囲み>日本での生漆生産量
  • 6章 漆液の採取と精製
  •  漆の採取(漆搔き)
  •   漆液採取とは/漆搔きの道具、時期及び搔き方
  •  漆の精製

書評・反響

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----- 2020/8 -----

『森林技術』No.940 2020.8(一般社団法人 日本森林技術協会)「BOOK 本の紹介」

 本書の内容を一言であらわせば「日本の漆のすべてがわかる本」である。2巻構成の第1巻は工芸、歴史、文化などの面からの漆の解説。第2巻は漆の材や育林方法など主に生物学の面からの漆の解説となっている。分厚い本ではないが読みごたえは十分。口絵や図表にも魅せられる。本書を読めばきっと漆が好きになるだろう。私は計2巻を通読して、安くはない本物の漆器を手に入れ、文字通りの宝の持ち腐れとならないよう大切に使いたいと思った。末永く使えることを考えれば、決して高くはないはずである。
 「漆をどうやって精製するか?」「漆にどうやって鮮やかな赤や黒の色を与えるか?」「どうやって漆で精緻な文様を描画するか?」本書では、こうした漆利用の手法が地域によって少しずつ異なり、さまざまな手法が編み出されてきたことが克明に記されている。南部鉄瓶が錆びないのは漆が塗られているため、というのも恥ずかしながら本書で初めて知った。また、漆が蜜蜂の蜜源にもなり、韓国ではなんと漆の材を食用に使うというのも初耳であった。
 本書は実用の書である。国産漆の増産が求められている今、特に第2巻の内容は実用的で、漆の栽培に関わる技術者には大いに役立つであろう。一方で本書は、地域の漆文化を伝承する書でもある。読み進めていくうちに、地域の漆文化保全のために組織的な活動が行われていることを知り安堵するとともに、漆掻きの道具を作る鍛冶職人が浄法寺町にお住まいの方お一人だけという現状を知り不安にもなった。どうにか将来に技術を伝承してもらいたいものである。
 技術者に限らず少しでも多くの人が本書を手にされ、漆に関する教養にふれてほしいと願う。漆=Japan という説もある。海外からのゲストに、ホストとして漆のことをきちんと説明できるようにありたい。そう思って、早速2回目の通読を始めたところである。(森林総合研究所/正木隆)

 

関連情報

 

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『日本農業新聞』8月26日【あぜ道書店】(書評ページ)
 …まるごと一冊『漆』にまつわる本

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