流域治水がひらく川と人との関係

嘉田由紀子 編著

気候危機の時代、
いのちを守る治水とは何か。
川と共に生き続けるための
流域治水のあり方を問う!

流域治水がひらく川と人との関係

2020年球磨川水害の経験に学ぶ
編著者:嘉田由紀子
定価:2,420円(税込)
ISBNコード:9784540212161
発行:2021/11
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 224ページ

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 2021年4月、「流域治水関連法」が国会で成立しました。
 温暖化が進み大規模水害が多発するなか、明治以来の「洪水を河川の中に閉じ込める」政策から、「溢れることを許容し、行政だけでなくあらゆる人たちがかかわる」政策が提起されたのです。これは国の治水方針の歴史的転換です。
 本書は、流域治水に関するさまざまな知見と、2020年7月4日九州球磨川水害の、被災当事者も加わった調査を紹介しています。
 「……私たちはここで被災したが、これからも球磨川と共に生き続ける」。これは、本書企画の元となった第2回流域治水シンポジウム(2021年5月31日)で提案採択された地元参加者からの「球磨川宣言」の一部です。
 明治以降の河川政策そして社会変化のなかで、川の問題は次第に限られた人たちのものととらえられるようになっていきました。本書は〈流域治水〉という視点から、川と人間の関係をあらためて検討しなおそうとするものです。「流域治水が“ひらく”川と人との関係」というタイトルには、そんな意味も込められています。

球磨川支流・市ノ俣川流域に広がる皆伐地と山腹崩壊(八代市坂本町)。2020年球磨川水害を甚大化させた原因の一つに山の問題があるとみられている/撮影:つる詳子

球磨川支流である小川の支流からは、根っこがついたままの巨木が流れてきた(球磨村)/撮影:市花保「清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会」

人吉市街地では7月4日午前6時半頃から支流の水が溢れ道路を覆い川のようになった/撮影:魚住芳正

洪水はヘドロと流木を伴って人吉市街地に流れ込んだ/撮影:黒田弘行「清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会」

流域で盛んなラフティングは清流球磨川があってこそ/撮影:木本千景「清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会」

目次

著者(執筆順)

嘉田 由紀子(編者)(かだ ゆきこ)

1950年埼玉県生まれ。農学博士。専門は環境社会学。前滋賀県知事、現参議院議員。著書『生活世界の環境学』(農文協)、『水辺遊びの生態学』(共著、農文協)、『水辺ぐらしの環境学』(昭和堂)、『環境社会学』(岩波書店)ほか多数。

つる 詳子(つる しょうこ)

1949年熊本県生まれ。八代市在住。熊本県内、特に球磨川流域のフィールド調査・保護活動に長年関わる。自然観察指導員熊本県連絡会会長。チームドラゴン環境アドバイザー。2014年日本自然保護大賞特別賞「沼田賞」受賞。

市花 由紀子(いちはな ゆきこ)

1970年宮崎県生まれ。2005年より球磨村渡地区に家族3人で在住。7・4球磨川流域豪雨被災者・賛同者の会および清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会会員。

木本 雅己(きもと まさし)

1951年熊本県生まれ。合資会社木本商店代表社員。人吉市で球磨川のほとりに暮らし続け戦後の水害をすべて経験する。清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会事務局長。

島谷 幸宏(しまたに ゆきひろ)

1955年山口県生まれ。前九州大学大学院教授、現熊本県立大学特任教授、大正大学特命教授。専門は河川工学、河川環境。著書『河川風景デザイン』(山海堂)、『河川環境の保全と復元―多自然型川づくりの実際』(鹿島出版会)、『2017年九州北部豪雨 集落会議の記録』(あまみず文庫)、『風景の思想』(共著、学芸出版社)ほか多数。

大熊 孝(おおくま たかし)

1942年台北生まれ。新潟大学名誉教授・NPO法人新潟水辺の会顧問・日本自然保護協会参与。専門は河川工学・土木史。著書『洪水と治水の河川史』(平凡社)、『技術にも自治がある』(農文協)、『洪水と水害をとらえなおす』(農文協、第74回毎日出版文化賞・令和2年度土木学会出版文化賞受賞)ほか多数。

宮本 博司(みやもと ひろし)

1952年京都府生まれ。株式会社樽徳商店参与・木桶樽造り職人。元淀川水系流域員会委員長・元国土交通省防災課長。

今本 博健(いまもと ひろたけ)

1937年大阪府生まれ。京都大学名誉教授・水工技術研究会代表。専門は河川工学・防災工学。著書『水理学の基礎』(共著、技報堂出版)、『ダムが国を滅ぼす』(共著、扶桑社)、『防災学ハンドブック』(編著、朝倉書店)ほか多数。

書評・反響

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『季刊@h[あっとエイチ]』Vol.72 2022年春号 人と水と空と森の話 第24話
 「風景の中の時間」(中川大介/人と水研究会)で本書が取り上げられています

『日本農業新聞』2022年4月17日 あぜ道書店 書評:農と自然の研究所代表・宇根豊
 …百姓だけではなく、開発された住宅地に住んでいる人にも、ぜひ読んでほしい。切実な本だから。

『熊本日日新聞』2022年3月6日 「命を守る」貴重な提言書 評・毛利賢一(熊日編集局長)
 …想定を超える豪雨が繰り返される今日、本書の副題である「経験に学ぶ」視点を共有したい。

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