著者
矢野 智徳(やの とものり)
1956 年福岡県北九州市生まれ。東京都立大理学部地理学科中退。合同会社「杜の学校」代表。
1984 年、造園業で独立。環境再生の手法を確立し「大地の再生」講座を全国で展開しながら普及と指導を続けている。クライアントは個人邸や企業敷地ほか、数年にわたる社寺敷地の施業も数多い。
近年の活動では宮城県仙台市の高木移植プロジェクト(宗教法人「神慈秀明教会」移転にともなう造園施業)、福島県三春町「福聚寺」、神奈川 県鎌倉市「東慶寺」等。災害調査と支援プロジェクトとして福岡県朝倉市、広島県呉市、愛媛県宇和島市、岡山県倉敷市、宮城県丸森町、千葉県市原市などに関わる。拠点となる山梨県上野原市に自然農の実践農場のほか、座学や宿泊できる施設に、全国からライセンス取得や施業を学びに有志が集う。2020 年「大地の再生 技術研究所」設立。2022 年、ドキュメンタリー映画『杜人/環境再生医 矢野智徳の挑戦』上映開始。第45 回山崎記念農業賞受賞。
大地の再生技術研究所HP「大地の再生 結の社づくり」
大内 正伸(おおうち まさのぶ)
1959 年茨城県水戸市生まれ。日本大学工学部土木科卒。1983 年、イラストレーターとして独立。
1986 年『山と溪谷』誌でデビュー。主に出版関係のイラスト・文筆に携わる。東京西多摩の森林ボランティアを機会に林業に関わり技術書を著す。2004 年より群馬県で山暮らしを始める。2011 年、香川県高松市に転居。棚田・溜め池・里山再生の「Gomyo 倶楽部」代表。2020 年、自邸の敷地で「大地の再生講座」を開催する。囲炉裏づくり等のワークショップや講演も多数。
著書に、『鋸谷式 新・間伐マニュアル』(全林協)『図解 これならできる山づくり』(共著/農文協)『山を育てる道づくり』『山で暮らす 愉しみと基本の技術』『囲炉裏と薪火暮らしの本』(農文協)『楽しい山里暮らし実践術』(ワン・パブリッシング)他。山暮らしの技術書には海外出版訳(台湾、中国、韓国)がある。
ブログ 「囲炉裏暖炉のある家 tortois+lotus studio」
Instagram 「tamarinnobu」
目次
- はじめに
- プロローグ―屋久島/大地の再生講座にて
- 1章 「大地の再生」とは? 総則―空気視点を取り戻す
- 1 疲弊する大地のサイン
- 水溜まりは地面の目詰まりサイン/ヤブ化は自然界において異常な状態/人の手入れと自然の手入れ/現代土木によるふさぎと、植物に寄り添う昔からの土木/沢水の詰まりがもたらすもの、グライ土壌と有機ガス/マツ枯れ・ナラ枯れのもう1つの原因/土砂崩壊―高山帯まで死に至る/海が磯焼け、河口に泥水が寄せる/水路や暗渠が浸透と生物浄化を弱める/ヒートアイランドはなぜおきるか? 乾いた大地と頻発する洪水被害
- 2 現代土木・エネルギー革命という負の側面
- 屋久島の森が荒れている―周回道路とトロッコ道/周遊道路で激変した 紀伊半島(熊野)、江須崎の森/「魚つき林」と「入江」の重要性/荒廃する全国の社寺 鎮守の森は巨大な浄化装置/使われなくなった溜め池と井戸/ウナギはどこに? 消えた石積み/表土を流した荒廃スギ・ヒノキ人工林―もはや再生不可能?/生き物たちが行なう大地の再生―獣害・虫害はどうしておきるのか?
- 3 その再生・解決法、希望はある、回復は早い!
- 植物を味方に、7つの再生手法
- ①風の草刈り―基本は高刈り、地ぎわ切りは一部だけ
②風の剪定―自然樹形に戻す、風通しのために切る
③小さな水切りが与える変化―表層5㎝の水脈と空気流
④水脈溝と点穴―荒療治にはコルゲート管を
⑤抵抗柵と植栽土木―荒れた里山は有機資材の宝庫
⑥沢や水路の再創造―流路をつくり泥アクを流域に分散、浸透させる
⑦仕上げはグランドカバー―炭の効用と枝葉のフィルター
- 4 全体の俯瞰―ミクロの「脈」とマクロの「流域」
- 流域を頭に入れ、細部を丁寧に―つながっている空気流/意識して渦流をつくる/有機物・炭使い・蛇行がよいという発見/結果的に生まれる菌糸・バクテリア/ほどよい流れを保つことの重要性―木の根に学ぶ「抵抗柵」
- 5 小さな庭先から、新たな「土・木」施工へ
- 敷地を再生する基本と手順/道具類―基本はノコガマと移植ゴテ/もっとも詰まりやすい場所―土圧のかかる「斜面変換点」/U字溝やコンクリート板に穴を開ける/三面張り水路に新たな自然を創る/遊歩道・登山道の階段と木杭/グリ石で固めず木杭で締める/「植栽土木」という概念/有機アスファルト・有機モルタル―現代土木との融合/現代の重機で、有機物の土木を―道づくりが自然親和的な土留めに
- コラム1:結(ゆい)作業の連携
- 2章 技術各論―計画(見立て)から各施工法まで
- 1 準備編、デスクワーク・現地踏査
- 1)見立ての手法(各種地図の準備) 2)見立てのポイント・施工手法 3)記録の仕方
- 2 資材調達
- 1)有機資材の種類(使えるもの) 2)竹の枝のさばき方 3)資材の切り方、運び方
- コラム2:里山再生と有機資材
- 3 地上部の作業―風の草刈り
- 1)風の流れをつくるために草を刈る 2)草を味方にする高刈り・撫で刈り 3)道具 4)風の抜け道をつくり、ブロック・カマボコ状に 5)刈り払い機の使い方 6)ツル植物、ススキ 7)その他のアドバイス
- 4 地上部の作業―風の剪定
- 1)「風の剪定」の道具と使い方 2)低灌木の風の剪定 3)落とした枝葉の処理 4)その他、剪定のアドバイス 5)樹木の伐採法 6)伐採枝、物の置き方
- 5 地面・地中の作業―水切り
- 1)表層の水切り(移植ゴテを使って) 2)大きな水切り(クワを使って)
- 6 地面・地中の作業―通気浸透水脈と点穴
- 1)通気浸透水脈、配置の考え方 2)溝の掘り方(重機の場合) 3)溝の掘り方(手作業の場合) 4)有機資材の入れ方 5)コルゲート管を入れる場合 6)埋め戻し、整地 7)点穴 8)水脈のメンテナンス 9)さまざまな施工のバリエーション
- コラム3:「大地の再生」道具図鑑
- 7 地面・地中の作業―抵抗柵、道の補修
- 1)抵抗柵(杭の打ち方) 2)角材と金具による抵抗柵 3)農道の補修と水切り
- 8 グランドカバーと有機アスファルト
- 1)グランドカバーと炭 2)有機アスファルト
- 9 里山・農地の再生
- 1)放棄田畑の再生の第一歩―風通しの確保 2)暴れ木とヤブの処理 3)石(岩)と植物、植栽土木 4)スギ・ヒノキ人工林の再生 5)放棄竹林・ササヤブの再生 6)田んぼの再生
- 10 沢、水路、溜め池の再生
- 1)自然の沢 2)人工水路(コンクリート護岸) 3)砂防堰堤 4)溜め池とビオトープ
- 11 ほうきとブロワーの仕上げ、物の置き方
- 1)ほうきとブロワー 2)風通しのいい物の置き方が原点
- 3章 各地の事例から―田畑・農道・崩壊斜面・庭
- 1 山梨/上野原実験農場
- 自然農と造園・土木の拠点/コロナと竹酢液、炭焼きの実践/畑の再生―重機の竜巻払い/ふつうの荒廃度の場合/「大地の再生」流・自然農田んぼ/茶畑の風通し/炭焼きの実践 2019年の台風被害/木々に守られた農道/補修のプロセス/農道のメンテナンス/農道の未来/北鎌倉「東慶寺」
- コラム4:北海道厚真町地震災害
- 2 京都府南山城村/リンダ邸
- 土砂崩壊・災害復旧の新しいやり方/まずは草刈り、斜面変換点の空気抜き/「風の剪定」と石垣との関係/石垣の目地を突つき、点穴をつくる/道をつくる―1.杭の打ち方/道をつくる―2.素材の重ね順/崖崩れ上部に水脈を配備する/崩壊斜面下部の処理/道をつくる―3.ルートは現場で決める/上部の水脈確認とグランドカバー/重機で道をつくる意味/地形溝(雨裂)の処理/「植栽土木」による強化/リンダ邸その後
- 3 Gomyo倶楽部/大内邸
- 香川県でもっとも豊かな自然が残る五名/「風の草刈り」と「沢そうじ」/「風のトイレ」をつくる/高松市郊外、500坪の敷地で/硬い地面と水溜まり/「大地の再生講座」でミニ池をつくる/周囲も変化する驚き/再生の手立てはある
書評・反響
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●『日本農業新聞』2023年3月12日 あぜ道書店(書評欄)
書店へいらっしゃい(三省堂書店農水省売店) 「売れる農文協の2冊」で紹介
●『日本農業新聞』2023年2月26日 あぜ道書店(書評欄)
書店へいらっしゃい(農文協・農業書センター) 大地の再生を考える
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