老いも死も自然がいいね

江森けさ子 著

40年間の看護職を経て、
20年にわたり地域介護を牽引してきた
80歳現役看護師の奮戦記。
故郷や自宅で穏やかに最期を迎えられるよう、
一人ひとりの老いや認知症を
ありのままに受け入れる
先駆的な介護・看護実践の記録。

ルーラルブックス

老いも死も自然がいいね

80歳現役看護師の挑戦
江森けさ子 著
定価:1,980円(税込)
ISBNコード:9784540221477
発行:2022/9
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:四六 164ページ

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グループホームすみかの居間。テレビには人間の代わりはできないと、1台も置かなかった。毎日、入居者のみなさんの歌声が響く。テレビやカラオケではなく、記憶のなかにある思い出の曲だ。(寺澤太郎撮影、以下も)

軒先で入居者のみなさんとフキの下ごしらえ。すみかの食材はすべて地元産。もともと働き者で仕事がないと生活に飽きが来る老人たちは手仕事をすると生き生き。その手さばきに圧倒される。

宅老所「峠茶屋」の散歩。緑の小道を雑談しながら、ゆったり歩く。当初は歩行困難な利用者も峠茶屋での生活を通して回復していく。人手がなくリスクも伴うという理由で、こうした散歩を取り入れている施設は少ない。

食事のときにエプロンは使わない。立派に生きてきた方々の思いを大事にする心があれば、しなくていい介護がある。椅子に座り、まっすぐテーブルに向かって姿勢を整えていれば、誤嚥もこぼすことも防ぐことができる。

認知症への誤解が、お年寄りも、ご家族も、地域の方も苦しめている。でも、言葉だけの説明だと、重くてつらい話になってしまう。そこで登場したのが人形劇だった。本人には語れない、困ったときの気持ちを代弁する。

著者

江森 けさ子(えもり けさこ)

1941年、長野県四賀村(現松本市)生まれ。
1959年から40年看護職。2001年帰郷。
2003年以降、通所介護施設峠茶屋、居宅介護支援事業所、グループホームすみか、住宅型有料老人ホームにしきの丘、訪問看護ステーションを開所。
NPO法人峠茶屋 訪問看護ステーション管理者、看護師、介護支援専門員、認知症ケア専門士。

目次

書評・反響

■ 読者カードから ■

----- 2022/11 -----

私も介護の仕事をしていますので、参考になりますし、考え方が進んでいると思います。負けていられません。私も頑張り、被介護者の気持ちに寄り添いたいと思います。

(広島県 介護職 70代 女性)

 

----- 2022/10 -----

もう少しで、もしかして、老後のお世話にはならないように、できるだけ自分で何事もやっていけるようにそんな生活を現在まで続けてきました。TVを置いてなく、施設の人たちとおしゃべりや歌を唄いながらいつまでも一緒にがいいですね。

(静岡県 60代 女性)

 

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■ 書評・ネットでの紹介など ■

----- 2022/12 -----

『文化連情報』2022年12月号(No.537) 書籍紹介

 「老いも死も自然がいいね」というタイトルは、実際に本書を読み、著者の取り組みを知ると、心からその通りだと思える。
 著者の江森けさ子さんは、長野県四賀村(現・松本市)で生まれ育ち、看護師資格を取得してからは長野・広島・静岡の各県の病院・診療所・看護専門学校で看護職として在職してきた。そして、2001年に故郷の四賀村に44年ぶりのUターンをして、看護の集大成として高齢者介護をしようと考え、小規模宅老所開設に向け取り組みを行った。旧公民館を改造し、2003年9月1日には小規模通所介護事業所として県の指定を得ることができた。人生の山坂を歩み続けてきた高齢者が、「ここらで一服」お茶でも飲みながら、夕日が輝くアルプスを背に、悠然と陽が沈むように人生を語りながら、最期のステージを迎えるお手伝いができたら本望、との思いを込め、事業所の名前は宅老所「峠茶屋」とした。
 「わが身にむち打ちわが身を削り、険しい人生の峠を越えて働き続けてきた人々の安らぎの場として、残された時間にふさわしい空間をつくり、少しでも役立つことができれば」という著者の思いが、何よりも介護や看護に通じる大切な思いなのではないだろうか。
 「峠茶屋」の、開設時からの道のりは順調だったわけではない。けれども、現在は地域になくてはならない存在となっている。
 著者は、事業が軌道に乗ったら介護の仕事は終わりにするつもりであったが、「最後にしなければならないことは、社会的役割を果たし生きてきた高齢者が安心して暮らせる居場所づくりだ」と考え、右肩上がりで増加している認知症の人たちが家族のように暮らせる、グループホーム(認知症対応型共同生活介護)も開設した。開設したグループホームには、テレビもカラオケもない。一見寂しく感じるかもしれないが、テレビを置かないことで、入居者は個人史に向き合い、失われていく記憶や言語を引き出すという。認知症の方には人間同士の付き合いが何より大切である、ということを実践した取り組みである。他にもグループホームにはいくつものルールがあるが、いずれもその人の思いを大切しているからこそのルールなのである。
 「世話をしているつもりが、じつは老人から世話をされているということがよくある。老人たちが職員を育て、介護の喜びを実感させてくれる」。このように思ってくれる職員の元で介護を受けられるのは幸せなことではないだろうか。このような場が多くあるのであれば、老いも怖くはない、とも思う。
 本書は、「序章―故郷の元気老人との出会い」から始まり、故郷で介護の取り組みを行う80歳現役看護師の訪問看護奮戦記として綴られている。

 

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『コミュニティケア』(日本看護協会出版会刊)2023年5月号 「BOOKS」

『岐阜新聞』2023年1月22日 「シニア図書館」

『全国商工新聞』2022年12月19日 「おすすめの一冊」

『山形新聞』2022年12月19日 くらし欄 健康・医療 本だな

『新潟日報』2022年12月5日 くらし欄「お薦めの一冊」

『ケアマネージャー』2022年12月号 NEW BOOKS 新刊紹介

『看護』(日本看護協会機関誌)2022年12月号 読者プレゼント BOOKS

『東京新聞』2022年11月3日
 「100年時代 情報BOX」で紹介 “60歳からの介護事業 奮闘記”

『市民タイムス』2022年11月2日
 介護や看護 活動の記録 四賀の江森さんが著書

『クレヨンハウス通信』vol.502(2022年11月号)
 落合恵子が選ぶ Other Voices に出会う本「Woman's Eye」Vol.338

 

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