地方創生やB級グルメなど地方を盛り上げようとする取り組みが盛んだ。
だがなぜ地方の人たちばかりがんばらなくてはならないのか?
農村風景を入り口に、
食と農業のあり方から、都市と農村の幸せな関係を構想する。
都市と農村の真に幸せな関係とは
真田純子 著
定価:2,200円(税込)
ISBNコード:9784540231247
発行:2023/10
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5変形 288ページ
「あれ、農村風景の美しさってどう理解したらいいの…」
この本は、著者である真田さんの困惑の言葉からはじまります。
景観工学が専門だが、農村の風景はどうもその枠組みにおさまらない。
そうであるならば、自分なりの見方をつくろう――とします。
着目したのは「食べもの=ごはん」です。
農村風景は、食べものと関係している、というのは直感的に理解できることです。
真田さんは、その先を、その奥を見ようとします。
そこから出てきたのは、農業や消費のあり方が農村の社会や環境に影響を与えるという見方であり、風景は、環境、社会、経済すべてとつながっている、というまなざしです。
そして、都市と農村の関係が農村の風景には現われている、と。
都市と農村の関係について真田さんは、「なぜ中山間地の人たちばかりがんばらなくてはならないのか」という深い問いも発します。
都市と農村の真に幸せな関係をめざす、「風景をつくるごはん」をめぐる旅。皆さんもいっしょにしてみませんか?
※本書の冒頭部分は詳細目次とあわせて「試し読み」からダウンロードできます。ぜひご一読ください。
徳島県吉野川市美郷でのはじめてのカヤ刈り。カヤは切って梳きこむと土の保水力が高まり、土が流れにくくなる。たいへんな作業だが、こうした作業が傾斜地の暮らしを支える。
「風景をつくるごはん」の実践、メニューを決めるのは土地と季節。
上左:若ごぼうと油揚げの炒め煮(春)、上右:ナスとレンズ豆のスープ(夏)
下左:レンコンのペペロンチーノ風(秋)、下右:大根と油揚げの煮物(冬)
ワイン農家が経営する、イタリアのアグリツーリズモの宿。地域の伝統的な建物、あるいは新築の場合でも地域の伝統的な建築様式で建てられた建物が使用される。
イタリアでも石積みを実践してみた。左が「皿の石=平たい石」で積んだ布積みで、右が「ジャガイモの石=丸っこい石」で積んだ谷積み。国は違っても石積みの原理は一緒。土地で採れる石を使うので、土地が積み方を決めると言ってもよい。
真田 純子(さなだ じゅんこ)
東京工業大学環境・社会理工学院教授。1974年広島県生まれ。東京工業大学在学中の1996年にヴルカヌスプログラム(日欧産業協力センター)にてイタリア留学(1年)。2005年東京工業大学博士課程修了、博士(工学)取得。徳島大学助教、東京工業大学准教授を経て、2023年3月より現職。石積み技術をもつ人・習いたい人・直してほしい田畑をもつ人のマッチングを目指して2013年に「石積み学校」を立ち上げ、2020年に一般社団法人化。同法人代表理事。専門は景観工学、緑地計画史。著書に『都市の緑はどうあるべきか』(技報堂出版、2007年)、『図解誰でもできる石積み入門』(農文協、2018年)がある。
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