アグロエコロジー

スティーヴン・グリースマン 著

持続可能で人類のニーズを満たす農業とは?
生態系と調和する伝統的農業と
健全な食料消費システムをつくるため、
「科学・実践(技術)・社会運動」を統合する
アグロエコロジー(農生態学)の教科書、初めての邦訳。

アグロエコロジー

持続可能なフードシステムの生態学
スティーヴン・グリースマン 著
村本穣司・日鷹一雅・宮浦理恵監訳
アグロエコロジー翻訳グループ 訳
定価:5,940円(税込)
ISBNコード:9784540231353
発行:2023/11
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:B5 512ページ

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持続可能な食と農のあり方を考える「科学・実践・運動」の新しいアプローチ『アグロエコロジー(Agroecology)』待望の日本語訳。アグロエコロジー(直訳すると「農生態学」)は、飢餓や環境破壊を引き起こす大規模・集約的な農業のあり方を変えるために生まれた新しい「科学」であり、原著は欧米を中心に教科書として広く使われている。アグロエコロジーは、自然の力を高める有機農業や自然農法の「実践」を広げる。また、環境や農業の分野に留まらず、経済・社会・文化の多様性を目指し、既存の価値観を転換する「社会運動」でもある。

 


推薦 藤原辰史(京都大学准教授)

根本から知らなければ、根本から変えることはできない。
水、風、土、光、植物、動物、人間が複雑にからまりあう農業という現象を、かくも魅力的に描いた書物を私は知らない。そう、農業を学ぶとは、地球をまるごと学ぶことだったのだ。
長いあいだ自然と人間に傷を負わせてきた工業的農業からアグロエコロジーへの道筋を、自然科学の厳密な論理と具体的な事例を交えて説くこの新時代の農書を手にすれば、もう未来に怯える必要はない。


米国・バーモント州バーリントン市におけるコミュニティガーデン。近隣都市住民が自家用野菜を育てるために300区画ほど用意されている。 撮影=Stephen R.Gliessman(以下同)

中米・ニカラグアの有機コーヒー園における表土の糸状菌糸。有機農法や多量の有機物施用、被陰樹で日陰をつくることが、重要な養分捕捉メカニズムを促進する。

小規模農場は主に家族労働でピーク時の人手不足を補っている。

中国・広東省における多様な村落景観。水田が低地の主要な部分を占拠するが、多様な菜園が家々のまわりに存在し、傾斜地や丘陵部には茶樹や林産物が産出されている。

お客さんで賑わうブラジルのリオグランデ・ド・スル州、ポルト・アレグレ市の有機農産物市場。

著者

スティーヴン・グリースマン(Stephen R.Gliessman)

カリフォルニア大学名誉教授。世界的に著名なアグロエコロジーの提唱者の一人で、慣行農業から有機農業への移行に伴う農生態系の変化を40年以上にわたり研究する。2012年に退職。現在、家族と共にワイン用ブドウやオリーブの有機農園を営む傍ら、アグロエコロジーの学術誌の編集長を務める。

 

目次

書評・反響

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『日本農業新聞』2024年3月24日 「どの地域でも成り立つ理論」
 書評:金子信博(福島大学農学群食農学類教授)

『作物生産と土づくり』(日本土壌協会)2024年2・3月号 新刊紹介

『全国農業共済新聞』2024年2月2週号 新刊紹介

『クレヨンハウス通信』2024年2月号 落合恵子のBOOK CLUB 今月の選書

『日本農業新聞』2023年12月17日 書店へいらっしゃい(農文協・農業書センター)
 待望の農生態学本

『全国農業新聞』2023年12月15日 話題 アグロエコロジーの教科書、初の翻訳本

関連情報

----- 2024/2 -----

日本有機農業研究会 会誌『土と健康』 2024年3・4月号
BOOK『アグロエコロジー 持続可能なフードシステムの生態学』
カリフォルニア大学サンタクルーズ校有機農業スペシャリスト 村本穣司

 アグロエコロジー (agroecology)は、持続可能な農業やフードシステム、あるいは有機農業を語る際、開発国、発展途上国を問わず、近年世界中で用いられているキーワードである。利益追求を最優先する工業的農業を根本的に変革するための科学的・実践的アプローチとして、アグロエコロジーは、国連、EU、フランスなどの農業政策、ならびにブラジルや中米における農民運動において近年重要な役割を果たし、世界的な潮流となっている。
 アグロエコロジーの世界的パイオニアの一人であるスティーヴン・グリースマン博士の本著は、英語圏の大学で最も広く使われている本格的なアグロエコロジーの教科書である。このたび、日鷹一雅さん(愛媛大)、宮浦理恵さん(東京農大)と私を含むこれまでに直接・間接的にグリースマン博士と交流をもった日本人研究者20名が本書第3版の翻訳を終え、2023年11月に農文協から上梓された。
 アグロエコロジーは、「科学」「実践」「運動」という3つの側面を持つ持続可能な農業とフードシステムを開発するための総合的な営みである。持続可能な農法とフードシステムの基礎として生態学(生物と生物、あるいは生物と環境の関係を研究する学問)の原理と知識を応用する「科学」的側面。農業者の地域固有の知識や経験を生態学の知識と融合して、より持続可能な農法と現場のシステムを作り出す「実践」的側面。より公平な食料配分をめざし、それを決める権力関係と経済・社会システムの根本的な変革を追求する「運動」的側面。この3つに同時に取り組みながら、持続可能なフードシステム、すなわち食料生産に携わるあらゆる人びとの生活と過程が「持続可能」であることに加え、将来の世代を含む地球上のすべての人びとが十分に食べることができるフードシステムの構築をめざす。50余年の歴史を持つ日本の有機農業運動との接点も多い。
 昨年12月に大阪で行われた日本有機農業学会で、監訳者の一人日鷹さんは、かつて彼が『有機農業ハンドブック』(日本有機農業研究会編・発行、発売 農文協。1999年)に書いた農生態学(アグロエコロジー)に関する論考を、今は亡き星寛治さんと金子美登さんが高く評価してくださったことを紹介された。私は、1996年に元日有研代表幹事の故天野慶之先生にサンタクルーズに移って学際的な環境学科でアグロエコロジーの研究を行うことをご報告した際、「自然科学と社会科学を同時に検討されるというのは、<一楽>流ですね」との激励をいただいた。以来27年もの歳月が経ってしまったのは私の実力不足に他ならないが、19名の方がたのご協力を得てようやく完成したこの訳書は、私にとって、かつて日有研を通じてお世話になった多くの方がたへの報告書でもある。
 本書が日本の有機農業や食・農・環境問題に連なる方がたの「思考の糧」となることを願ってやまない。

 

 

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