長良川のアユと河口堰

蔵治光一郎 編

河口堰によって分断された
清流長良川の生物圏を再生し、
社会や経済の基盤として復権させ、
川と人の関係を結び直す可能性を探る。

長良川のアユと河口堰

川と人の関係を結びなおす
蔵治光一郎 編
定価:2,420円(税込)
ISBNコード:9784540231278
発行:2024/3
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5変形 232ページ
カバー・表紙画:村上康成 ファン通信「風」

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日本三大清流に数えられる長良川は、本州の大河で唯一本流にダムと堰のない川と言われ、山・川・海の連続した生物圏の上に豊かな水文化が育まれてきた。アユをはじめ海と川を回遊する生き物、汽水域で生活する生き物は長良川の大切な恵みであり、川の生物圏の連続性、持続可能性の指標だが、河口堰はその営みを分断した。2015年、長良川の天然アユは岐阜市で準絶滅危惧種に指定(後に削除)、「清流長良川の鮎」が世界農業遺産に認定された。本書は、生物多様性の喪失が地球の限界を超えている時代に、川の生物圏を再生し、社会や経済の基盤として復権させ、川と人の関係を結びなおす可能性を探る。
 


推薦のことば

山口 保(木彫工房メリーゴーランド)

かつて、川には、人々の生活が息づいていた。夏の水辺は、水遊びの子供達でいっぱいだった。私達は、この国の自然に生かされ、文化を育み、時を繋いで来たのではなかったか。

山口一郎(サカナクション)

いつのまにか川は、ただの水路となり、山は無価値なものとして、打ち捨てられてしまった。いずれ「バチ(罰)が当たる」と、祖母の言葉を思い出した。

 


photo1

夏の長良川支流・吉田川。岩場から川に飛び込む。郡上八幡の子供は川で育つ(1987年、磯貝政司撮影)

photo2

世界農業遺産にも認定されている清流長良川のアユ(2010年6月2日、岐阜市、向井貴彦撮影)

photo3

長良川河口堰。下流側から撮影。1995年の運用開始後、川の生物圏は分断された(『長良川下流域生物相調査報告書2010』より)

photo4

孵化直後のアユ仔魚。産卵10日前後で孵化して海に下るが、河口堰の影響で大半の仔魚が海に下れず死ぬ(2013年11月18日、岐阜市、向井貴彦撮影)

編者

蔵治 光一郎(くらじ こういちろう)

1965年東京都生まれ。東京大学大学院農学生命科学研究科教授。博士(農学)。専門は森林水文学、森と水と人の関係。1989年東京大学農学部林学科卒業。同大学院博士課程在学中、青年海外協力隊員としてマレーシア・サバ州森林研究所に勤務。東京大学助手、東京工業大学講師、東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林准教授、同・愛知演習林長、同・生態水文学研究所長を経て現職。愛知県長良川河口堰最適運用検討委員会委員、矢作川森の研究者グループ共同代表、水循環基本法フォローアップ委員会座長など務める。
単著に『森の「恵み」は幻想か 科学者が考える森と人の関係』(化学同人)、『「森と水」の関係を解き明かす 現場からのメッセージ』(全国林業改良普及協会)、共著に『森林水文学 森林の水のゆくえを科学する』(森北出版)、『社会的共通資本としての川』(東京大学出版会)など、共訳書に『水の革命 森林、食糧生産、河川、流域圏の統合的管理』(築地書館)、編著に『水をめぐるガバナンス 日本、アジア、ヨーロッパの現場から』(東信堂、第19回高知出版学術賞)など、共編著に『森の健康診断 100円グッズで始める市民と研究者の愉快な森林調査』『緑のダムの科学 減災・森林・水循環』(築地書館)など多数。

長良川から切りひらく、川と人の未来|編集者のこぼれ話
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『日本農業新聞』2024年7月28日 構造物の最適運用を探る
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『BE-PAL』2024年6月号 BLUE & GREEN FIELD 「BOOK」
 運用から30年、長良川河口堰に向き直す

『しんぶん赤旗』2024年4月21日 ほんだな

 

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