百姓・宇根豊と考える農の哲学 上
宇根豊 著
定価:1,980円(税込)
ISBNコード:9784540251436
発行:2026/6
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:四六 264ページ
「農業とは食料生産のことである」という常識を一度疑ってみよう。そこからこれまで見えなかった農のあり方が見えてくるかもしれない。「虫見板」を使った減農薬稲作や田んぼの生きもの調査をいち早く実践してきた著者が、新しい視点から農の本質に迫っていく。効率を求め機械化・大規模化を進めてきた農業技術が見失ったものは何か。AIを中心としたスマート農業に大きな期待が寄せられているが、農=百姓仕事にはマニュアル化できない技や知があることを忘れていないか。「農らしさ」「農の本質」という視点から冷静に見極めていくことが求められている。
百姓・宇根豊と考える農の哲学 下
宇根豊 編
定価:1,980円(税込)
ISBNコード:9784540251443
発行:2026/6
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:四六 256ページ
食べることは生きものを殺すこと。そして農業は日々、生きものを殺し続ける職業である。だがそのことを百姓はふだんそれほど意識していないし、悩むこともない。それは、いのちと「また会える」と確信しているからではないか。そして、農によって、生きものを含む天地自然が人間の身体に入り込むようになったからではないか。しかし、農が産業としての農業に変わっていくなかで、人間もまた自然(天地)から切り離された存在になっていった。百姓の本来のあり方から、人間中心主義の農業を超えて「めぐみ返し」としての農を取り戻す道を模索する。
宇根 豊(宇根 豊)
1950年長崎県島原市生まれ。島原高校、九州大学農学部農学科卒業。1973年より福岡県の農業改良普及員。1978年より福岡県下で減農薬稲作運動を提唱。1988年糸島郡二丈町(現・糸島市)にて就農。2000年福岡県庁を退職。NPO法人「農と自然の研究所」を設立、代表理事に。2004年九州大学より農学博士の学位取得。2010年農と自然の研究所はNPO法人を解散して任意団体へ移行。
主な受賞歴 1985年第11回山崎農業賞(山崎農業研究所)、1999年日本農業普及学会奨励賞、2003年日本作物学会第2回技術賞、2006年 「第7回明日への環境賞」(朝日新聞社、農と自然の研究所)、2009年 「第1回環境アワード」(環境省・イオン財団、農と自然の研究所)など。
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----- 2020/9/13 -----
[書評] 百姓・宇根豊と考える農の哲学 上・下 宇根豊・著
自然と生きる“百姓の世界” 哲学者 内山節
著者の宇根豊は、豊富な知識の持ち主だ。だがこの本は、知識で書かれてはいない。百姓としての自身の身体がみつけだしたことを語り、魂がみている世界を語る。書かれているのは、身体性や霊性によって見いだされた百姓の世界である。宇根にとって知性は、見いだされた百姓の世界を言葉にするための道具にすぎない。
江戸時代に、宮崎安貞の『農業全書』が刊行されている。この本は広く読まれたが、宮崎は農学者だった。中国の農学書から学んで書いたのだが、中国語の読み間違いからくる誤りもあった。知性は人に誤った認識をももたらす。
それに対して宇根の本は誤りがない。百姓の身体や魂が感じとった農の世界を書いているからである。だからこの二冊の本は、『百姓全書』とでも言うべき内容を提起している。農業の『全書』ではなく、百姓の『全書』なのだ。
宇根がとらえた百姓の世界は、自然の生き物たちと生き死にを共有する世界だった。それは本当なら、百姓だけの世界ではなかった。食事をするという行為自体が、食べ物がつくる生き死にの世界を共有することだからだ。
さまざまな命が共振し合って、我々(われわれ)の世界をつくっている。だが近・現代的世界はこのことを忘れた。その結果、百姓たちが生きている世界は見捨てられ、代わって農業生産だけが国家や社会の目標になっていった。百姓は農民になり、農の営みは農業になった。そして生産効率が課題にされた。
それは農民の農業離れをも促進していくことになった。なぜなら百姓が生きている世界自体に価値があるということを忘れ、生産物や利益にしか価値がないという社会がつくられれば、価値を生みださなくなった時、人々は農の世界から離れていってしまうからである。
百姓とは何か、農の営みとは何か、自然とともに生きる世界とは何か。この本は、そういうことを根本から解き明かした農の哲学であり、同時に自然哲学の書である。
『日本農業新聞』より転載
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●『日本農業新聞』2026年9月13日 あぜ道書店(読書欄) 書評:内山節(哲学者)
自然と生きる”百姓の世界”
●『日本農業新聞』2026年8月16日 書店へいらっしゃい(農文協・農業書センター)
自然との共生改めて問う